整形外科
整形外科は、脊椎や手・膝関節など運動器の疾患全般を治療対象とする診療科となります。
外傷による擦り傷や怪我、加齢による骨粗鬆症、腰痛などの変性疾患、スポーツ障害、感染や腫瘍などを含み、その治療対象は幅広いものとなります。整形外科で取り扱う疾患は手術が必要な病態もありますが、多くは手術を必要としない保存治療が可能です。
脊椎脊髄疾患 手術
脊椎脊髄疾患は変性以外にも先天性疾患や結合識疾患、外傷や感染症などその疾患が数多くあり、かつ発生した高位により多彩な症状をきたします。そのため整形外科医師といえども専門外の医師にとって正しい診断および治療が困難な領域です。
院長は長年、脊椎脊髄疾患の診療を担当し、2,000件以上の脊椎手術治療を経験してきました。また、脊椎疾患の中でも側彎症などの脊柱変形、腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアや高齢者の脊椎疾患に対する低侵襲手術を多く担当してまいりました。
基本的な考え方として、可能な限り手術以外の選択可能な治療法について患者様と一緒に検討し、外来診療で可能な範囲の対応をしますが、重症な症例では手術による治療介入が必要となります。手術が必要な患者様は提携する北里研究所病院または調布くびと腰の整形外科クリニックで院長自らが手術を執刀・担当します。
症状の改善が見られず手術治療を検討している方、担当医師より手術治療を推奨されたが不安がある方、手術治療を希望されるがどこに受診したら良いのかわからない方は院長の外来を受診予約してください。
頚椎椎弓形成術
- 適応疾患
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- 頚椎症(頚椎症性神経根症 頚椎症性脊髄症)
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 頚椎後縦靭帯骨化症
脊髄及び神経根などの神経圧迫を除去する手術です。1980年代に開発された片開き式椎弓形成術という術式を行って改良して行っています。近年は、頚椎の後ろにある多数の筋肉が付着する棘突起と呼ばれる骨を、切除せず縦割する「棘突起縦割式頚椎椎弓形成術」という術式を行っています。また、チタン製の椎弓プレートを設置し再手術率の低下を図っています。後ろから神経組織が広範囲にかけて除圧し、圧迫されていた神経の状態を良好に改善することで神経症状の回復を図ります。
手術時間 約60-120分
入院期間 約7日
参考:岡田英次朗 戸山芳昭 松本守雄 頚部脊髄症に対する片開き式脊柱管拡大術MB Orthop.27(2):49-54,2014
頚椎前方固定術/頚椎人工椎間板置換術
- 適応疾患
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- 頚椎症(頚椎症性神経根症 頚椎症性脊髄症)
- 頚椎椎間板ヘルニア
頚椎の特に前方から神経組織を圧迫している症状に適応となります。「頚椎前方固定術」は頚椎の前方から顕微鏡などを用いて圧迫部分を直接切除し人工骨などで固定する術式で、手術直後から優れた除痛効果が見られることから、行われることが多い術式です。 「頚椎人工椎間板置換術」は、人工骨ではなく可動性を有する人工椎間板を挿入することで術後頚椎の可動性を残したまま症状の改善を獲得することが可能です。
手術時間 約60-120分
入院期間 約7日
参考:岡田英次朗 松本守雄 専門医の整形外科外来診療 頚椎症、頚椎椎間板症、頚部脊髄症、頚部神経根症、crowned dens syndrome p147-151 南江堂 2017年
棘突起縦割式腰椎椎弓切除術
- 適応疾患
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- 腰部脊柱管狭窄症
- 腰椎すべり症
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰椎側彎症
臀部から下肢に放散する坐骨神経痛や、間欠跛行*をきたしている患者さんに適応があります。腰椎の後ろにある椎弓と呼ばれる椎骨の一部と肥厚した黄色靱帯を部分的に切除することによって神経の圧迫を取り除く手術です。一般的な腰部脊柱管狭窄症や、軽度の変性すべり症、狭窄を伴う腰椎椎間板ヘルニアの患者さんに対して行われる手術です。椎弓切除術は腰椎手術の中でも最も一般的で広く普及している方法です。手術時間は1か所であれば1時間以内で終了し、入院期間は7日以内で済む、身体への負担が比較的小さな手術となります。
手術時間 約50-120分
入院期間 約7日
*間欠跛行とは しばらく歩いていると足が痛くなったりしびれたりして歩けなくなりますが、少し休むと、また歩けるようになる歩行障害のことです。
参考:岡田英次朗 渡辺航太 松本守雄 棘突起縦割式腰椎椎弓切除術Loco Cure vol.1 no.3 38-43 2015年
後方椎体間固定術(PLIF Posterior Lumbar Interbody Fusion, TLIF Transforaminal Lumbar Interbody Fusion)
- 適応疾患
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- 腰部脊柱管狭窄症
- 腰椎すべり症
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰椎側弯症
椎弓切除術後に腰椎の不安定性を伴う場合、術後不安定性が出現し、疼痛の原因となってしまう可能性があります。そのため、スクリューやケージ(人工骨)を用いて不安定性のある腰椎を固定する手術が「後方椎体間固定術」と呼ばれる術式です。手術後、固定した椎間に骨癒合が得られるまでは注意が必要です。脊椎の状態を見て、やや外側から椎間板へアプローチする「TLIF」と内側からアプローチする「PLIF」があります。手術で使用する椎弓根スクリューは経皮的椎弓根スクリューを採用し、腰椎の筋肉へのダメージと術後疼痛の軽減化を図っています。
手術時間 約60-120分
入院期間 約7日
参考:岡田英次朗 本当に手術に必要な解剖図 腰椎後方手術 OPE NURSING 87-90 2018年
経皮的椎体形成術(BKP Balloon Kyphoplasty もしくは VBS Vertebral Body Stent)
- 適応疾患
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- 骨粗鬆症性椎体骨折
以前は圧迫骨折と言われていた骨粗鬆症による椎体骨折に対して行われます。多くは高齢者で転倒や重い物を持つなどの軽微な外力で胸腰椎に骨折をきたし、疼痛が強い場合に行います。骨粗鬆症椎体骨折は多くの場合コルセットなどの保存治療で骨癒合が得られることが多いので、基本的には手術ではなく治療を選択します。しかしながら骨癒合が得られない場合には寝返り、ベッドからの立ち上がりなどで疼痛が長く出ることがあり、日常生活動作に支障が出る場合、手術を行います。「経皮的椎体形成術」は比較的新しく開発された負担の少ない手術方法です。全身麻酔でレントゲン透視を行いながら慎重に骨折部を確認し、約5mm皮膚を切開した後、金属製の小さい筒を骨折した椎体まで挿入します。筒からバルーンもしくはステントを用いて、骨折し潰れた椎体を持ちあげることで骨折部の整復を行います。最後に骨折した椎体内に骨セメントを挿入することで不安定な骨折部位を固定します。手術時間は30-60分であり、手術による出血はほとんどないことから80歳以上でも身体に負担は少なく、安定した成績の得られる脊椎手術です。
手術時間 約30-60分
入院期間 約3-4日
腰椎側方椎体間固定術(XLIF eXtreme Lateral Interbody Fusion)
- 適応疾患
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- 腰椎すべり症
- 腰部脊柱管狭窄症
- 腰椎椎間板ヘルニア
「腰椎側方椎体間固定術」は、以前より行われていた腰椎前方固定術を新しい機器を使用して患者さんの身体への負担が少ない脊椎手術です。普通の脊椎手術では後方に皮膚切開を行い、脊椎に侵入して除圧や固定などの操作を行います。腰椎側方椎体間固定術は側腹部に小さい皮膚切開を行い筋肉の間から脊椎にアプローチします。後方から入れる手術と比較して、出血が少なく、骨を削ることが必要なく、人工骨もより安定した大きさのものを挿入することが可能であり、これまでの手術とは異なる治療方法の選択肢となります。特にすでに手術をされている再手術例では一度手術操作の加わった部分を操作する必要がないために神経症状の悪化の可能性が低く済むという利点があります。
手術時間 約60-120分
入院期間 約7-10日
お問い合わせ
脊椎担当医師の外来でご相談ください。 適応となる手術方法、予想される成績と起こりうる合併症について説明を行います。 すでにレントゲン写真やCT,MRIを撮影している場合には、参考になりますので画像データを持参していただけますと、より詳細な説明が可能です。
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岡田英次朗
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河合桃太郎
腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法
腰椎椎間板は上半身の重みを引き受け、骨盤に伝えるとともに、前後屈や回旋運動など大きな可動域を持っています。この相反する機能を持つ腰椎はスポーツや日常生活動作で変性し、つらい腰痛や坐骨神経痛をきたします。椎間板の髄核が線維輪を穿破し神経根を圧排する腰椎椎間板ヘルニアは働き盛りの30~50歳代に多くみられますが、10歳代や70歳以上の高齢者にも見られる疾患です。
多くの場合、外来診療で治療が可能です。痛み止めやリハビリテーション、ブロックなどの手術以外の治療方法で治療により症状は改善し、比較的予後が良好な疾患とされています。近年の医療技術の進歩により、腰椎椎間板ヘルニアの診療にも進歩が見られます。MRIは高解像度化したために微小なヘルニアでも診断が容易となりました。
重症例では従来法や内視鏡を用いた手術治療でヘルニア塊を切除していましたが、2018年より酵素を用いた椎間板内治療が保険収載され一般診療の場で使用されるようになりました。なかでもコンドリアーゼを使用した椎間板内治療は国内で開発され、7割を超える神経痛の改善率は高い評価を受けています。
私はコンドリアーゼの椎間板内治療に国内臨床治験の際より携わり、その安全性や有効性を学会や医学論文で多くの報告をしてまいりました。治療は一般的な保存療法(痛み止めやブロック治療など)が困難であった場合に、コンドリアーゼを使用した椎間板内治療を行います。希望される方は提携する医療機関で、1泊2日入院で治療を行います。それでも奏功しない場合には内視鏡下椎間板切除術などの手術治療が選択されます。
院長が監修した腰椎椎間板ヘルニア、椎間板内治療についてのホームページ【腰ヘルニアjp】は以下からご覧ください。